お白石持行事

平成五年の記憶が呼び起こされた瞬間。
あまり憶えていないなあと思っていたけれど、
ちゃんと私の中に刻まれていることに、じぃぃんと目頭が熱くなった。
そして今年のこの瞬間、新たに私に深く刻まれたのだった。
     
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式年遷宮を間近に迎え、先日、御白石持行事に参加したことで
益々、私自身が故郷、伊勢についてもっと学びたい、
「お伊勢さん」「日本のふるさと」と言われ年間何百万人もの参拝客が訪れているという神宮のことをもっと知りたい、と思いました。
私の知識がまだまだ浅いので、「検定 お伊勢さん 公式ガイドブック」と「お伊勢さんと遷宮」を参考文献とさせて頂き、式年遷宮についてここに綴らせて頂きたいとおもいます。
伊勢の神宮では平成十七年から今年二十五年までの歳月をかけ、祭りや行事も重ね、
現在六十二回目の式年遷宮が行われています。
二十年に一度、という定められた年に、神社の社殿を造り替え、
奉納する御装束や神宝などもすべて一新して神々に新宮へお遷りいただく大祭を「式年遷宮」と言います。
神宮は平成八年にご鎮座二千年を迎え、第一回目の式年遷宮は今から約千三百年前だそうです。
 二十年に一回、と定められた理由は様々な説や考察があるそうです。
社殿は檜の素木造り、屋根は萱葺きという自然素材の掘立柱式なので、耐久限度と尊厳保持のため、という説。
宮大工などの伝統技術の世代継承のため、という説。
旧暦で約二十年に一度、十一月一日と冬至が重なるという暦法による原点回帰の年にするという考え方の説。
二十年という社会的にも個々の視点からも新たな転換期を迎えるという一区切りとして、すべての発展、更新、繋げていくことを祈るという説。
日本が稲作を基盤に国づくりをしてきたことを物語る、古代の国家経済を支えた稲の貯蔵年限を二十年と定めた古代の基本法の倉庫令の条文により二十年、と定め、遷宮を行うために必要な税=稲の備蓄可能な年限を根拠とする説。があるのだとか。
しかし二十年に一度更新され、伝承されてきた遷宮も、内乱や第二次世界大戦後の危機的状況時には行われることはなく遅延せざるをえなかった時代もあったそうです。

そこで終わらずまた繰り返し行う事が出来ていること、今年で第六十二回目を迎えられる今、があることに、ただただすごいと尊敬と感謝の気持ちを持たずにはいられないと思いました。
第六十二回神宮式年遷宮記念出版の「お伊勢さんと遷宮」では、
二十年に一度繰り返すことによって、千三百年余の記憶を今に伝える装置…遷宮は壮大な記憶措置、とも言われる。
遷宮は、人々が平和でないと行うことが出来ない、平和を積み重ねること、というようなことも書かれていました。
自分自身を大切にし、人、自然を敬い、尊い一日一日を有り難く生きることで十年、二十年という節目を築く事ができ、自分を見つめ直すことができ、初心を思い出し、また新たな目標をたて夢も見て、平和な時代を重ねていくために自分は何ができるか、動く、使命もある…命のバトンを繋げる、伝統をそして歴史を学ぶことの重要さ、続ける、ご先祖への感謝をつよく思ったのです。…と自分でこうやって書き連ねると、当たり前、のこと、のような気がしてきました。勉強不足につき、このような安易な解釈しかまだできないのかもしれませんが、まずは根本的な事をあらためて思ってしまった私が今いるのです。
二十年前の時の気持ちは今更何を言っても後付けになると思うので言葉にならないのですが
今回、式年遷宮という過去と今をひとつずつ体感し、未来を想像していくなかで言葉にしたいと思ったことは面白いくらいにそんなシンプル?なことばかりが溢れるのでした。
伊勢市民が参加できる遷宮の祭りは、
社殿を建てるご用材(御木)を、外宮まではお木曵車で市街地を陸曵きで運び、
内宮までは、川曵きで御木をソリに載せて曵く御木曵行事と、
そのご用材で数年かけて建てられた新たな社殿の御敷地に敷く白い石を、御木曵行事と同じように市民が白い石を陸曵き、川曵きで宮域まで運んだら、白い敷石をひとりひとり白い布に包んで新殿まで持ち、一番奥にある通常の参拝では入れない正殿の周囲に置きに行くという御白石持行事があります。
市民たちが町ごとに分かれ、七十七もの奉献団があり、全国から募り特別神領民としても参加できる「国指定選択無形民族文化材」にもなっている市民のための行事です。
それぞれの奉献団ごとに法被、お木曵車があり、木遣り音頭など各町の伝統や特徴があるのです。
私が先日ご縁があって参加させて頂いたのは、正宮の棟持柱となる大木を曵くことを担っている小川町(おがわまち)です。
夏空の下、エンヤ!エンヤー!と皆でかけ声をあげながら曵き、お木曵車の木製の車輪のヴォォゥンと鳴る「わん鳴り」という摩擦音が高らかに響く音の心地よさったら、たまりません。
そしてひとりひとり御白石を持って、ぴかぴかの新殿の御敷地内へと歩を進めるのです。
その瞬間、わたしは二十年前の記憶がきらりと蘇るのでした。
二十年、お世話になった社殿が
新宮に一新する遷宮の儀は十月です。

また二十年がはじまります。
あつい、日本はあつい。


2013年08月14日